言葉

いつも聞いているニュースが私の知らない言葉に聞こえる――

「菊?」

ソファで突っ伏している菊に、心配そうにアーサーが近づく。

『アーサーさん。』

(…俺のことを呼んだのか?) どうした? 」

『アーサーさんの言葉が分からないです。』

(俺が何なんだ?ぜんぜん分かんねぇ。)

泣いてアーサーの腕の中におさまる菊。

どうしたんだろうと考え続けるアーサー。

 

数分後。ずっと泣いていた菊がそっと起き上がり何処かいってしまった。

心配そうにアーサーは菊についていった。

菊は本のたくさんある部屋で何か探していた。

「何探してるの?」

『えなんとおっしゃったのですか?』

うつむく菊と分からない言葉を聞いてアーサーはペンと手帳を取り出した。

菊は受け取って絵をかいた。

分厚く、表紙に文字が書かれるが、アーサーは読めない。

困っているところ、菊が思い出したように一言付け加えた。

『ワード?』

アーサーがそれに気付いて菊を一つの本棚の前に連れて行った。

アーサーの指差す先には辞書が並んでいた。

菊の顔が明るくなるのが見えた。

菊は背伸びをして、跳んで。それでも届かなかった。

アーサーは菊の腰に手を伸ばした。

「ひゃぁっ!」

菊の手は辞書に届いた。

菊は辞書を引きながらアーサーに見せた。アーサーはそれを読む。

「分からないあなたの言葉。」

アーサーも菊の持っていた辞書を借りて引いて見せた。

『私しかし

読んでいる途中でアーサーは菊の口元に近づいて―――。

最後に耳元でささやいた。

「俺が菊を愛してるのは変わらない。」

菊は真っ赤になっていた。

数秒後に沈黙を破ったのはアーサーだった。

「今言ったこと分かった?」

「ええ。」

お互いきょとんとした目で見た。

いまさらながら恥ずかしいと思ったのはお互い様だった。