「お風呂、上りました。」
そっとドアノブをひいて菊は部屋に入った。
「おう。」
部屋にはアーサーがベッドの上に座って本を読んでいた。
(メガネかけることもあるんですね。)
ふとそんなことを菊は思った。
「ん?」
「あ、いえ…。」
さっと菊は視線をずらす。
アーサーはメガネと本をランプスタンドの横に置いた。
「そういえば、この前来た友達がワインをくれたんだけど一緒に飲むか?」
「いいんですか?」
「せっかくだからな。」
そういってアーサーは二つのグラスに深紅のワインを注いでいた。
「では、お言葉に甘えて…。いただきます。」
「おぉ。うまいな。」
「そうですね。」
そういって二人はそれぞれのグラスに入っていたワインを飲み干した。
「…。」
「…どうした?」
ワインを何杯か飲んでから口数がいつも以上に減った菊を気にした。
「…。」
「何やってるんだよ?!」
「…えっとですね…熱いもので…。」
そういって寝巻きの帯をおぼつかない様子で菊は解いていた。
「え…やめろっ…。」
アーサーはとめようと菊の腕をつかむと菊は倒れこんだ。
「ふかふかです…。」
そうつぶやいてアーサーの胸に顔をうずめた。
菊はそれ以後動かなかった。
「寝た…?」
アーサーは解けかけている菊の帯を結ぼうとするがうまく結べずにいた。
どうしようもなくなり、アーサーはどうするか考えた挙句、そのまま寝ることにした。
「…?」
菊が目を覚ました。が、頭はまだ寝ていた。
アーサーが起きた。
アーサーが体を起こし菊の顔を覗き込んでも無反応。
「…ハッ。あう……す…すみません。」
急に我に返り、状況を見る限り菊は謝るしかなかった。
菊はアーサーの上に座っており、なんともはしたない格好だと自分で驚いていた。
あわてて謝りながら退く菊をアーサーは何も考えず見ていた。
「別に…気にしてないからな…。」
そう言ってアーサーはベッドから立ち上がりシャワーを浴びに行った。
菊はその場で何故あんなことになってしまったのだろうと昨日の夜のことを思い出そうとするが、何も思い出せなかった。
その日、菊は悩み続けた。