春。
菊とアーサーは縁側で一緒にお茶を楽しんでいた。
「綺麗ですね。」
桜の花びらが散る中で菊は言う。
何処からか、鶯の鳴く声もあった。
「そうだな。そういえば、さっきから聞こえるこの音は何だ?」
「鶯ですか?緑色をした綺麗な鳥ですよ。」
「あと、このひらひらしたものは何処から飛んで来るんだ?」
「桜の木ですよ。お花見にでも行きますか?」
「花見?」
「はい。今日は桜の木下で、昼食でもとりましょうか。」
準備を終え、家を出たのは10時半ごろ。
「こちらのほうに桜の木がたくさんあったと思いますよ。」
荷物を持って裏の細道を歩いていた。
「ここにも桜の木が。」
「白に見えたが実はピンクなんだな。」
「ほのかに色づいているのがかわいいですよね。あ、あそこですよ。」
菊の指差した先には桜の木の森といっていいほどの公園があった。
何処もかしこも木下には人がいた。
「静かそうなところは…。」
「奥のほうにあるんじゃないのか?」
「行ってみましょうか。」
そういって奥に進むこと約一時間。
先ほどまでよりも鮮やかな桜を見つけた。
そして、あまりにも奥のほうだったからか、人もいなかった。
「ここはいかがです?」
「いいね。」
中でも一番大きな桜の木下にシートをひき、お弁当を広げた。
「菊の料理は上手だよな。」
「ありがとうございます。」
昼食も終え、桜を楽しみ1時を上回ったところで菊はカバンからお団子とビンを取り出した。
「お花見は花見酒、花見団子を食べるのも楽しみなんですよ。」
「へぇ、綺麗な色だな。」
団子を手にしてアーサーは言う。
「どうぞ。」
菊は、アーサーの横にそっと盃を置いた。
自分の分も注ぎ、一緒に飲んだ。
「…て、これアルコールじゃん。菊…?」
「はい…?…あ、今注ぎますね。」
ビンを取って、アーサーの手にある盃へ注ぐ。
「どうも。」
大丈夫そうだなと思い、アーサーは桜を見上げた。
「菊?」
ふと、菊のほうを見ると菊は、アーサーと木にもたれて寝ていた。
「やっぱり、アルコールはだめだな。」
そのままアーサーも、もたれて昼寝をすることにした。