「おい、菊。早くしないと遅れるぞ。」
「えっ、もうそんな時間ですか?」
あわてて、着替えを手に、部屋に駆け込んだ。
今日は大事な会議の日。
普通の時間に起きたのだが、菊は一つ困ったことが…。
「どうしましょう…。」
慌てているためでもあるがうまくネクタイを結べずにいた。
「スーツなんて…そんなもの着る機会なんてありませんよ…。」
ため息混じりに結ぼうとがんばっていた。
「おーい。入るぞ。」
アーサーがドアノブを明けると、菊はさっと後ろを向いた。
「…。」
「どうしたんだよ。」
アーサーが菊に近寄る。
「…やっぱりできません…。」
菊はあきらめてネクタイから手を離した。
「最初から言えばいいのに。」
くしゃくしゃになった菊のネクタイを伸ばし、アーサーは膝たちをして結んであげた。
菊は頬を赤らめてそっぽを向く。
「はい。ちゃんと今度からは言えよ。…あー時間が…。急げ。」
アーサーは菊の手を引っ張って家を出た。