「失礼します。」
ノックをして菊がお茶を持ってきたのは、アーサーの書斎だった。
「アーサーさん?」
書斎の奥にある席でアーサーは寝ていた。
ちょっと揺さぶっただけでは起きなかった。
「お仕事詰めで疲れたんでしょうね。」
スースー、と気持ちよさそうに寝ているアーサーを見て思った。
「そうです!」
何か思い立ったように菊はアーサーの後ろに回った。
ちょっとためらいながらも、後ろから抱きついた。
少しすれば、温かさと眠気に負けて菊もそのまま寝ていた。
菊が起きたのはアーサーの腕の中だった。
「…あれ?」
「おはよ。」
「時間からして、「こんにちは」と「こんばんは」の間ですよ。それ以前に、なんで?」
たしか、菊はアーサーの後ろにいたのに…。
「菊から来るのは珍しいな。」
「いつもやられてばっかりですから。」
「あーぁ、せっかくのお茶も冷めちゃいましたね、持ってきます。」
立ち上がろうとする菊をアーサーは離さない。
「こっちの方があったかいから、これで良い。」
「お仕事、進みませんよ。」
「いいの、いいの。」
そういって、また、アーサーは寝てしまった。