私は、言われる言葉を真に受けて、傷ついた。

それと同時に、言われる言葉を真に受けて、助けられた。

 

今思えば、どうでもいいようなことからいじめが始まった。

 

相手はちょっと、からかってみただけかもしれない。

 

それを私は気にしすぎて、何か言われるたびに気にして、だんだん自信をなくして。

それを面白がってなのか、いじめはエスカレートしていった。

それでも、私はそこから逃げたくなかったから、何があっても学校には行った。

 

 

授業中には、消しゴムや紙くずを投げつけられた。

冬になれば、カイロを投げつけられた。

 

暴言も吐かれた。

 

同じ班の人に目の前で足を踏みつけられながら言われた。「あんた、うざいんだけど。」

「それはキツくない?」笑って周りの人は見てる。

 

風邪で休んだ次の日には、「なんで学校にいるの?」「死んだんじゃなかったのかよ。」

 

移動教室の間に、私の席を隠された。

 

掃除が終わって教室に帰れば、机の上に枯れかけた花の花瓶が置かれていた。

 

授業中、先生がプリントを取りに教室から離れた。その間に、私のせいではないことを責められ机を蹴られた。周りの人は知らない顔だし、戻ってきた先生もいなかった間、何があったかも知らず、授業を続けた。

 

引っ越してくる前、私は学級委員や、委員長をやっていた。

もうすぐやってくる体育祭で、頑張ってみようと応援団に立候補した。

信任を得るのにいくらか質問や反対を受けたが、結局女子で他にやる人がいなくてやった。

同じ団のほかのリーダーにも何かしら言われた。

リーダー同士の打ち上げが大会後にあったらしいが、私はそれを終わってから友達から教えてもらって初めて知った。

 

後期の係り決めで学級長にならないかと言われたが、先生に、「きっと、あなたがやったらいろいろ押し付けるつもりだろうからやめたほうがいいと思うよ。」と言われた。

 

行事の前に行事の中心となる子に手紙を書いた。

『周りの人に何か言われても、気にしないで頑張って。』

その手紙はいじめの中心の子に渡って、目の前で破り捨てられた。

「悪口が書いてある。」と言って破り捨てた。

その場にいた先生はその言葉だけを聞いて、私を攻めた。

 

 

 

 

傷ついて傷ついて、なんのためにここに生きているんだろう。

ずっと探してさ迷っていた。

 

雨の日。

その日も嫌なことがあった。

車道を猛スピードで走る赤い車が見えた。

『このまま、飛び出してしまおうか。』

 

 

 

 

今、私が生きているのは、あの壁を乗り越えたからだと思う。

 

 

 

 

あの日、あの場で心に響いた言葉。たくさんの言葉。

 

手紙を渡した行事の日。あのあと、手紙を渡した相手から、『ごめんね。ありがとう。』と言われた。そばにいた担任の先生は『ちゃんとわかってるから。』そばにいた友達に言われた。『ありがとう。』

 

授業のなかで、私の発言に対して、『聞こえません。』『わかりません。』と責められた授業の後、気づかってくれた先生がいた。『何かあったら、言ってな。』

 

黒板に背を向けて一時間、授業をした先生に呼ばれた。『授業中、モノ投げられてんだろ。今後もなんかやなことがあったら、言いに来なよ。』

 

 

『総長って呼ぶねぇ! …放ってるオーラが危ないから()

『試練はねぇ、乗り越えられる人にしか与えないんだよぉ。絶対乗り越えられる!

『何処にいたって、ずっと親友なんだから。』

 

 

『うちね、ここに引っ越してきたから、親友のお葬式に行けなかったの。すっごくすっごく、寂しかった。』

 

 

悲しませちゃいけない人がいる。

私には、生きなきゃいけない理由がある。生きていく価値を見つけることができた。

だからもう、この命を捨てようとは思わない。死に逃げたりなんかしない。

 

 

いろんな感情が溢れて、雨の日に私は泣きながら帰った。

「考えちゃいけないことを考えたんだ。」

 

 

 

このままじゃ何も変わらない。

そもそも、このいじめのきっかけってなんだろう。

 

『ナンデダロウ?』

 

 

私は電話をした。

引っ越す前に仲のよかったあの子に。

引っ越してきていじめの中心になったあの子に。

 

「何か悪いことしたかなぁ?やめて欲しいこととかあったら言ってください。」

『とくに、ないの。』

「また、仲良くしてくれる?」

『うん。ごめんね。』

 

 

もちろん、次の日の話題はその電話の話。

でも、悪いことをしたわけじゃない。

だから、堂々としていられる。

女子からのいじめはなくなった。

 

 

今度はあの子がほかの人にいじめられるようになった。

 

席がひとつ空いている。

 

私はあの子に会いに行った。

「話を聞くよ。」

 

幾日かして、あの子は教室に戻ってきた。

周りは悪口を言う。

 

でも、私はそばにいた。

 

昔みたいに仲良くなりたいから。

誰かのために、なりたいから。

 

 

先生や親に言われるのは『大人だね。すごいね。』

 

子供だからできないの?

大人だったらできるの?

 

私は、言葉の重みを知った気がする。

傷つけることも、救うこともできるもの。

 

ほんとに、冗談から始まった。いじめも、自分の力になったものも。

『総長』ってあだ名。

面白半分で付けられたかもしれない。

あだ名を聞いて引く人がいるかもしれない。

でも、この言葉には私の理想がこもっている。そして、救われた。

 

『総長なんだろ?何も恐れないで、正々堂々と生きてやる。』

 

ただの馬鹿かもしれないかもしれない。

それでも、乗り越えられたといえる大きな壁がある。

その壁がなければ、こんなに苦しまなかったかもしれない。でも、この壁があって今の私がいる。誰かの為に生きる私がいる。

 

 

次に来る壁はもっととてつもなく大きいかもしれない。

それでも私は、それをこえてみせる。